パジャマが強奪されている

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夏の寝間着はTシャツに短パンと相場が決まっている。私の父は季節の終わりに売れ残りの安い衣料品を買い漁ることを生きがいとしている人であるから、うちにはどこで買ったのか見当もつかないへんてこりんなTシャツが沢山ある。

たとえばスーパーサイヤ人悟空Tだ。そのように自己主張の強いものを着れば私の儚い存在感など簡単に消し飛んでしまうので街ゆく人にはTシャツが歩いているように見えるに違いない。このようなTシャツはもっと自己を確立した人物が着なければならないだろう。かといって捨てるのも惜しいのでそんなへんてこT達には寝間着として活躍してもらうことにしている。

しかし、ここ最近私のタンスの中に入っている寝間着Tの在庫が著しく少なくなっているのだ。おかしいなあ、などと考えながらリビングに向かうと母の胸に悟空。母は自分の寝間着にするために洗濯に出された私の寝間着Tを少しずつ奪っていたのである。

本来の持ち主が眼前にいるにも関わらずテレビなどみてケラケラと笑っている。盗人猛々しいとはこの事だ。私はあきれ果てて父にこの状況をどう思うか聞こうと振り返った。父が着ていたのも私の寝間着であった。

これは大変な暴挙である。仮に私が年頃の娘であったとして、父が私の寝間着のキャミソールを自分の寝間着として使っていたら怒り狂って離縁も辞さないだろう。私はパパの後にお風呂に入るのはイヤだし、パパの洗濯物と一緒に自分のものを洗うのでさえ勘弁してほしいのに!そして針でつつけばぷしゅうと飛んで行ってしまいそうなパパの腹のせいでてろてろに伸びた無残なキャミソールだけが後に残るのである。

 

一般的年頃娘がキャミソールで寝ているかは全く定かでないが、この例えで重大なことだとお判りいただけたかと思う。

当然、私は抗議したが両親の別にいいじゃんの一言に一蹴されてしまった。養われている身である私の地位など父の飼育しているエビの足元にも及ばず、悲しいかな私の悟空は母の魔の手に落ちた。

 

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父の飼っているエビ、小さくてかわいい

我が家の衣類事情において問題はそれだけではない。母は私と父のパンツの違いが判らず私のタンスの中に父のパンツを混入させて来るのだ。かつて、めんどくさいからという理由で父と靴下を共有していた私でもさすがにパンツの共有は生理的にきついものがある。父親の息子と息子の息子が間接的にでも接触するなど想像するだけでも身の毛がよだつ。

何度違いを説明しても母が洗濯物をたたむと毎回一枚か二枚は紛れ込んでくるので油断ができない。おちおちとパンツを穿いてもいられないのだ。 

むしろ母はパジャマの共有化と共にパンツの共有化も促進することによって衣類の合理化を図り家計を助けようとしているのではないかとさえ思える。

そうに違いないと思い、ある日母にそんなにパンツも共有したいなら自身のパンツも差し出せと要求したところあんたバカじゃないのと心底呆れられた。

私もまったくもってその通りだなとおもった。